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ファッションとしてのテクノロジー。ロボティクスファッションクリエイターきゅんくんとの新型ウェアラブルアームロボット”METCALF clione”

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2016.03.29

IT もファッションの一部に。ファッションとしてのアームロボット ”METCALF clione”を開発。

イノラボは元々「未来の街」をテーマに、2013年4月からグランフロント大阪を拠点として、IoTを活用した ナビゲーションや口コミでコミュニケーションを活性化する試みを行ってきました。

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取り組みではサイネージやスマートフォンアプリを活用して街全体を盛り上げることに成功する一方で、ファッションなど個人の尖ったニーズにはアプローチしにくいという課題を抱えていました。しかし最近ではウェアラブル端末など、個人単位で自分の使いたい IT を選べるようになり、IoTがより個のライフスタイルにアプローチしやすい環境が整ってきました。

そこでイノラボは、最も個のライフスタイルが反映されやすい分野として ファッション に着目。世界的なロボティクスファッションクリエイターであるきゅんくんを外部研究員に迎え、イノラボの新研究領域 Robotinity & Fashion を立ち上げました。

METCALF(メカフ)は、きゅんくんが2年ほど前から開発しているウェアラブルロボットアームのことで、メカフという名称はメカ服が由来。元々ロボット工学を専攻しており、その後ファッションに興味が出てきたので、それらを融合して現在は METCALF を中心とした“ファッションとしてのロボット”を展開していると説明しました。

今回発表する METCALF clione は、従来の METCALF を軽量化した後継機。METCALF clione 構想はもとからあり、設計から完成までは約3ヶ月と短期間で制作しました。

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新型のMETCALF clione は、青色のグラフィックとアクリル板を掛けあわせ、透明感のある美しいデザインを実現しました。”clione(クリオネ)” という名称は、筐体がブルーのグラフィックで透明感があり、海洋生物のような見た目だったことからきています。

METCALF clione と従来の METCALF の異なる点は3つ。

1つ目の特徴は軽量化したこと。前モデルはアルミニウムを前面に押し出したデザインで3kgと日常の着用には重かった。METCALF clione では軽量化を意識して、アクリル板とアルミニウムを利用して前モデルの約半分の重さにすることに成功しました

2つ目に、METCALF clione にグラフィックを配置したこと。METCALF clione のデザインは、グラフィックデザイナーであり、元々きゅんくんの名刺やロゴをデザインしていた Rei Nakanishi さんが担当しています。

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Rei Nakanishi さんがデザインしたきゅんくんのロゴ。

今までのロボットはデザイン性のあるグラフィックを取り入れているものはほとんどなかった。METCALF clione はファッションのためのロボットなので、デザイン性も重視しています。

また、今回ロボットにグラフィックをデザインするという試みに関して工夫した点は?という問いに Rei Nakanishi さんは「扱う素材がロボットだからといって特別なデザインはせずに、ファッションの延長として自然なグラフィックを取り入れている」と話しています。

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そして3つ目の重要なポイントとして、スマートフォンから METCALF clione の操作が可能になったことが挙げられます。従来はマイコンでプログラムして動かしていましたが、今回はソフトバンクグループであるアスラテック社の「V-Sido(ブシドー)OS」を用いることで、手元のスマートフォンから起動などの動作が直感的にできるようになったのが大きなポイントです。

実際に動かしている様子は上の動画から確認できます。ロボットアームの開閉時の動きはバレエから影響を受けているとのこと。こういった細かい点にもきゅんくんの開発へのこだわりが感じられます。

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kyn10左が、Rei Nakanishiさん。

きゅんくんは METCALF clione の開発にあたり「ファッションが人間の形にとらわれるのは勿体無い。それにとらわれないファッションやデザインをしていきたいと思う。今後の METCALF clione の展開としては、まず自由度(ロボットにおける間接の数)を高め、より柔軟な動きを取り入れいく。また、肩だけでなく他の様々な部位のロボットも作って、いずれは色々な人がファッションとしてロボットを取り入れられるようにしていきたい」と想いを伝えています。

このMETCALF clione は、グランフロント大阪で開催される「うめきたフェスティバル」の「うめきた未来ラボ 」で3月30日から4月2日まで展示され、6月にはフランスで行われる国際的メディアアートイベント「バンニューメリック」で展示する予定です。

きゅんくんがリードする “Robotinity & Fashion” では、ファッションとテクノロジーの融合をテーマに、個のライフスタイルというところに適合できるウェアラブル端末を開発し、ファッション表現の幅を拡げて、世界中の人々の自己表現の多様化に挑戦していきます。

text:INNOLAB.jp編集部