『笑顔で世界を変えていこう!』というコンセプトのもと、イノラボでは“笑顔技術”を活用した取り組みを行っている。その一つが「エミタメ」だ。これは鏡に向かって笑ってくれた人の笑顔を「エミー」というポイントにして貯めることができるミラー型サイネージで、貯まった笑顔の量に応じて、地域や社会に貢献する活動と連動している。実施したイベント事例では、協賛企業が、貯まったエミーの量に応じて、自社の社会貢献プログラムと連動した寄付活動を実施することで、結果的に『皆の笑顔で社会を変える』仕組みを実現させた。具体的にどのような技術でどのような社会貢献につなげているのか、プロジェクト担当の西川氏と増本氏に話を聞いた。

増本 裕介
AI教育サービスアーキテクト

西川 敦
Communication(s) Maestro
笑顔は人を幸せにし、周りの人も前向きにさせるパワーがある
「笑顔で世界を変えていこう!」というコンセプトでプロジェクトを立ち上げたきっかけは、純粋に笑顔が持つ魅力に着目したことでした。人は笑顔になるだけで幸せな気持ちになるし、その周りにいる人も前向きな気持ちにさせてくれます。テクノロジーを活用して笑顔でつながる体験をうまく設計できたら、社会を変えられるのではないかと考えました。
そこで開発したのが、笑顔を認識する顔認証技術を使った、鏡型の大型サイネージ「エミタメ」です。これは、ミラーサイネージの前に立って笑うと、笑顔をリアルタイムで解析して笑顔度「エミー」を計算できる仕組みで、エミーは貯めることができます。そして、貯まったエミーの量に応じて何かしらの活動につなげていく。実際に、このエミタメを活用して社会貢献活動につなげた事例が、東日本大震災の復興イベントとして実施した、スマイル基金でした。
これは、2013年4月から約4ヶ月間、グランフロント大阪で行なったチャリティーイベントで、ミラーサイネージの前に立った人に笑顔になってもらい、貯まったエミーの量に応じてスポンサー企業が寄付活動を行う形で社会貢献活動につなげました。
笑顔を集めて社会貢献につなげるというコンセプトはスポンサー企業の満足度が高く、また笑顔になってくれた人たちも間接的に社会貢献できるのが面白いと積極的に参加してくれました。その結果、推定10万人を超える人たちに体験いただいて、490万エミーを超える笑顔を集めることができ、東日本大震災の被災地である福島の子どもたちを大阪に招待する「週末さとやま留学」を開催できたのです。
そして、この一連のコンセプトが評価され、2013年のグッドデザイン賞の受賞につながりました。
このほかにも、2017年には東京都品川区にある御殿山トラストシティで開催された『GOTENYAMA ART & TECHNOLOGY WEEK 2017』にエミタメを出展。ビルに入居されていた生花店と連携し、体験者がミラーサイネージの前で笑顔になってエミーが貯まっていくと、会場に色とりどりの花が増えていくという演出を仕掛けました。
こうしたイベントを通して実感したのは、「笑顔」はそれ自体にパワーがあり、笑ってもらうことをネガティブに捉える人がほとんどいないことです。体験する最初の一人になる人には多少の恥じらいがあっても、笑顔は人を集めるという本質的な特徴があるので、次第に周りに人が集まってきて、最終的には笑顔で溢れる体験を作れました。
地域の取り組みにエミタメを活用し、笑顔のリレーをつなげたい
エミタメを開発以来、さまざまな期間限定イベントに活用し続けていますが、今後の課題として検討しているのは、もう少し腰を据えた長期的なビジネスにするための仕組みやサービスを設計することです。もちろん、期間限定イベントも継続しつつ、長期的なサービスができるような仕掛けを作りたいと考えています。
その手法の一つとして挙げられるのが、全国各地で地域に根ざしたイベント会社やIT企業と組んで、地域の取り組みにエミタメを活用してもらうことです。そう考えるきっかけとなったのが、御殿山トラストシティのイベントに参加したことでした。
このイベントには、品川に本社を置く地元企業として参加したのですが、それによって地域とのつながりが生まれました。きっと、関係ない地域のイベントに参加していたら、同じようなつながりは生まれなかったと思います。
この経験から、長期的な取り組みをするには地元企業でつなげていく方法が有効だと考え、あるアイデアが浮かびました。それは、東海道の宿場町である品川で地元企業や店舗と一緒にエミタメを使った取り組みを実施し、次の宿場町にバトンを渡して社会貢献につなげていく「笑顔のリレー」です。
こうした長期的に取り組めるモデルケースを作りながら、日本全国の各地域で企業や人が笑顔を起点につながっていく仕組みを作っていきたいと思っています。
笑顔は人を幸せにするからこそ、日本中に笑顔の輪を波及させる
エミタメの良さは、笑顔度をスコアリングして、その価値をいろんな形に変換できることです。新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、多くの人が明るい話題を必要としているからこそ、笑顔を使って世界中の人が元気になれるような新しい企画を模索しています。
たとえば、アーティストの無観客ライブやオンライン握手会にエミタメの仕組みを導入すれば、その場にいなくても笑顔の輪を広げながら楽しめる可能性はあります。混雑を避ける意味でも、リアルとバーチャルをつなげて体験を共有できるような仕組みは、さまざまな領域で求められる可能性が高いでしょう。
また、業績が落ち込んでしまった観光業界や宿泊施設にエミタメの仕組みを活用すれば、何か記憶に残るようなおもてなしをするきっかけになるかもしれません。それだけでなく、医療従事者やリモートで仕事ができない職業に就いている方など、日々ストレス過多な状態で働いている人たちを精神面で支えていけるような、笑顔と安全を守れる仕組みを作れたら、より良い社会につながっていくはず。
人は幸せだから笑顔になるのではなく、笑顔になることで幸せになり、その輪は広がっていくと考えています。笑顔になった人と笑顔を向けられた人の双方が幸せになる仕組みを仕掛けることで、日本中に笑顔の輪を広げて、少しでも多くの人の助けになれば嬉しいです。
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