
コロナ禍により様々な体験のオンライン化が進む今、どんなツールが求められるのでしょうか。本プロジェクトでは年々需要が高まっている「オンラインのプログラミング教室」に着目。ヒアリングを通して見えてきたオンラインならではの課題の解決を目指し、新ツール開発を進めました。

安崎郁生
Creative business planner
コロナ渦でも注目を集めるプログラミング教室
イノラボでは昨年に引続き、with/afterコロナを踏まえた新サービスの企画やプロトタイプ開発を進めています。今回は中でも教育に焦点を当てた企画をご紹介します。
小中学校でもプログラミング教育が必修化されたように、国内全体でプログラミングの需要は高まっています。更に昨今コロナ渦で学びの場はオフラインからオンラインへと変化していきました。
そこで私達はプログラミングをオンラインで指導する「オンラインプログラミング教室」をターゲットに、新たなツールの企画を始めました。
グループ間のつながりを感じにくいオンライン授業
コロナ禍で広がりを見せるオンラインによるプログラミング教室は、一見するとオンラインでも問題がないように見えています。しかし、実際にプログラミング教室を運営する株式会社TENTO代表竹林様にお話を伺うと2つの課題が明らかになりました。
1. グループに分かれると他グループの様子が分かりにくい
2. 各グループを行き来するのに手間がかかる
TENTOは複数のグループに分かれて授業を行っています。オフラインの場合、生徒は気軽に別のグループを覗きに行くことができましたが、オンラインでは他グループの様子が見えないため、グループ同士・生徒同士のつながりが生まれにくいそうです。
オンラインでのグループワークには、Zoomのブレイクアウトルームなどがよく使用されます。ご存知の通り、参加者を少人数のグループに分けてミーティングを行うことができる機能で、「これから30分間グループに分かれてアイデアを出し合ってください」という際などに使います。しかしいざグループに分かれると、他グループの映像や音は遮断され、様子が全く分からなくなってしまいます。また、グループ間の行き来にも手間がかかります。
オンラインでもまるで教室にいるかのように移動しやすく、他グループとのつながりを感じやすくするにはどのような体験が必要なのでしょうか。
教室をモチーフにした新たなミーティングツール”Remohere”
そこで私達が開発したのが、教室をモチーフにしたオンラインミーティングツール「Remohere(リモヒア)」です。名前には「Remote×Hearing×Here(離れていてもここにいるよ)という意味が込められています。
Remohereでは全員が一斉に画面共有できるので、先生は生徒のプログラミングを俯瞰しやすくなっています。そして画面右側には「テーブル」という機能があり、参加者はテーブルごとに分かれてミーティングを行うことができます。
<テーブル移動イメージ>
このテーブル機能がZoomのブレイクアウトルームと異なるのが、他グループの音声がさりげなく聞こえてくる点です。これにより、生徒は”まるで教室で友達に囲まれているかのような”音環境で作業を進めることができます。もちろん、静かにしたい時は周囲の音をミュートにすることも可能です。また、一瞬で参加者が好きなテーブルへ移動できるので、グループ間を移動する手間がかからないことも大きな特徴です。
<従来ツールとの比較>
実際にRemohereをTENTOの授業にも使っていただきました。今回は約20人の生徒が4グループに分かれてそれぞれの課題を進めました。
各グループが課題についてワイワイ話し合ったり、テーブルを何度も移動する様子は、とても活気に溢れていました。授業後、生徒からは「テーブルを行き来して他のチームのやり方を参考に進めることができた」「周りの声が聞こえることで集中力が高まった」などの声があり、新たなコミュニケーションにつながったことが分かりました。
一方で個人ワークなどテーブル移動が必要ない場合はRemohereを使うメリットは少ないと言えます。利用シーンは見極める必要がありそうです。
オンラインでもオフラインのような多彩なコミュニケーションが取れる未来へ
新型コロナウイルスの影響によりさまざまな体験のオンライン化が進みました。しかし、オフラインの方が気軽にコミュニケーションを取れることも事実です。そのため、これからは”オフラインのコミュニケーションの良さを取り入れたオンラインツール”が拡大していくのではないでしょうか。
Remohereはオフラインの教室の良さをオンラインへ取り込むべくして作られたツールです。今回の実験では、リモートプログラミング教室のグループワークに活用できそうだということが検証できました。今後はポスターセッションやセミナー、電通グループ内での利用など、プログラミング教室以外への展開も視野へ入れています。
オフラインでもオンラインでも全く不自由せず、多彩なコミュニケーションが取れる世界。そんな一歩先の未来へ向けて、イノラボ は引き続き研究を進めます。
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