宅配

宅配ロボットがおつかいに挑戦!!
~「ちょっとどいてくださ~い」といいながら、品川港南エリアを走行~

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2018.04.27

宅配ロボットが遭遇する走行中のトラブルを、「人が介入して」解決できないか?という実験を実施

ロボットが人間の生活や仕事をサポートしてくれる未来を目指し、近年その技術は急速に進展しております。しかしながら、ロボットを100%自動化することや、実社会で有効活用するための社会インフラを整備するには、まだまだ多くの時間やコストが必要になります。

 

例えば、宅配ロボットを都市部で走行させた場合、「狭い道に障害物があって通れない」「セキュリティゲートがあって中に入れない」「エレベーターに乗ることができない」といったように、目的地までの走行を妨害する様々なトラブル(以下エッジケース)が数多く発生することが考えられます。このような想定外に起こりえる課題に対し、「全て自動」で解決することはとても大変です。

 

今回の実験は、そのエッジケースに対して「全て自動でどこまでできるか」というアプローチではなく、「エッジケースの際に人が介入し、周囲の人とコミュニケーションによって目的(デリバリーサービス)を達成できるか」という実社会へのサービスインを見据えた、現実的なアプローチとして行いました。

 

 

実験の流れ

実験は、品川インターシティでCarriro Delivery(ZMP社の宅配ロボット)にコーヒーを積み、走行中に起こる様々なエッジケースを遠隔にいるオペレーターがTiCA(東京大学と開発した遠隔コミュニケーションデバイス)を通じて回避し、400mほど離れたイノラボスタジオ(19階)まで無事に届けられるか、というシナリオで実施しました。

 

イノラボスタジオからカフェをオーダー 

まず、イノラボスタジオからカフェをオーダーする所から始まります。実験スタッフが「ねぇ、TiCA」

とスタジオから呼びかけると、スクリーンにTiCA AIが表示されます。

 

 

イノラボでは、将来的にTiCAにAIを搭載し、状況に応じた簡単な音声コミュニケーションを自動で行えるようにしたいと考えており、今回はそのような未来を想定した、擬似的なAIオーダーシステムを使って実験を行いました。

 

実験スタッフとTiCAによる会話で注文内容が確定すると、そのオーダー情報はTiCA専用サーバーを通じて、品川インターシティのカフェへと送信されます。

 

カフェを積み込み、品川インターシティから宅配ロボットが自律走行を開始

カフェ店舗前で、通知を受けた店員さんがCarriro Deliveryにカフェを積み込みます。

 

 

積み込みが完了すると、イノラボスタジオへ向けて自律走行を開始します。

 

進路を人で塞がれている状況を、TiCAを使って回避できるか 

イノラボスタジオへ向けて走行していると、ベビーカーを引いているお母さんが走行ルートに重なるようにしゃがみこんでいます。このような時に、TICAを通じてコミュニケーションを図ります。

 

 

「大変申し訳ありませんが、通して頂けますか?」と尋ねると、「ごめんなさい!ちょっと待ってくださいね」とお母さんが返答。こちらも急かすことはせず「大丈夫です。ゆっくり準備してください」と応答します。すると、作業を終えたお母さんは「ありがとう」というお礼と共に、快く道を譲ってくれました。

 

TiCA搭載宅配ロボットはセキュリティゲートの侵入やエレベーターへの乗車にも対応できるか

道中のエッジケースをTiCAによるコミュニケーションで回避し、ISID本社ビルに無事到着。エントランスを通りすぎると、セキュリティゲートの向こう側にエレベーターホールが見えますが、人の手を借りなければ入ることができません。そこで、先ほどと同様にTiCAを通じてそばにいた社員の方にコミュニケーションを図ります。

 

 

「大変申し訳ありません。現在イノラボスタジオまでカフェを配送する実験を行っているのですが、セキュリティゲートを開けて19階までお連れいただけますか?」。そう伝えると、社員の方は少し驚いた表情を見せつつもすぐにこちらの状況を理解し、「いいですよ」と返答。こちらもお礼をしつつ社員の方の後ろをゆっくりと走行します。こうして、セキュリティゲートの通過、エレベーターへの乗車もなんとか乗り越えます。

 

エッジケースを回避し、イノラボスタジオまでのおつかいに成功!! 

エレベーターを降り、19階の通路を抜けるとイノラボスタジオが見えてきます。後はコーヒーの受け渡しをして終了です。ゆっくりとスタジオの扉の前に停車すると、TiCAから「ご注文のコーヒーをお持ちしました」と呼びかけます。その声を聞いたスタッフが駆け寄り、「ありがとうございます」とお礼をいいながら、扉を開けてオーダーしたコーヒーを受け取ります。

 

 

実験では、このような道中の様々なエッジケースに対してTiCAによるコミュニケーションで都度乗り越え、無事にデリバリーサービスを達成することができました。

 

 

主な掲載メディア

今回の実験は、テレビやラジオ、新聞をはじめ、多くのメディアに取り上げていただきました。以下のWebサイトでも詳しく記載されています。

 

電通報:

「人とロボットが共生する世界」を品川のオフィス街で社会実験!

 

 

マイナビニュース:

自動走行ロボが人と会話しながら品川で”おつかい”に挑戦

 

 

レスポンス:

全自動じゃなくても…人が助ける宅配ロボット、品川でコーヒーをデリバリー

 

 

ネットショップ担当者フォーラム:

宅配ロボットの実証実験[動画レポート] & 世界のデリバリーロボット事情まとめ

 

 

日経電子版:

電通国際情報、ロボ作業を遠隔で手助け 実地導入しやすく

 

 

日経電子版(有料記事):

電通国際情報、ロボットを人が手助け 東大と機器開発

 

 

日経クロステック(会員限定記事):

ロボットが「ちょっと通してください」、あなたならどうする?

 

 

日刊工業新聞電子版:

IoAデバイスと宅配ロボ、都内で自律走行試験 ISIDなど

 

 

レスポンス:

宅配ロボットがコーヒーをデリバリー、品川港南エリアで実証実験

 

 

ニュースイッチ:

IoAデバイスと宅配ロボット、都内で自律走行試験

 

 

Yahoo!ファイナンス:

ISID、東大とロボットとの共生社会に向けたIoAデバイスを共同開発

 

 

マイナビニュース:

ロボットとの共生社会を具現化するIoAデバイス「TiCA」共同開発

 

 

IT Leaders:

LEDによる遠隔コミュニケーションデバイスの実証実験、ISIDと東大暦本研

 

 

Itmedia:

ロボットが「助けて」と言ったら? 東大、人とロボットの実証実験を品川で実施

 

 

 

IoT news:

ISIDと東大暦本研、ロボットとの共生社会に向けたIoAデバイス「TiCA」を共同開発

 

 

モーニングスター:

ISID、東大とロボットとの共生社会に向けたIoAデバイスを共同開発

 

 

livedoorニュース:

IoAデバイスと宅配ロボット、都内で自律走行試験

 

 

Gazoo:

宅配ロボットがコーヒーをデリバリー、品川港南エリアで実証実験

 

 

Logistics today:

宅配ロボットと人がコミュニケーション、ZMPなど実証

 

 

TiCA搭載宅配ロボットの実証実験を終えて

実験の終了後、TiCAと直接コミュニケーションをとった方や、見学していた方にアンケートを実施いたしました。

 

その一部をご紹介すると、CarriRo Delivery並びにTiCAに対する印象としては、その赤くて丸いフォルムやボイスチェンジャーを利用した幼げなTiCAの声も相まって、「興味深い」「面白い」「かわいい」など、好意的なご意見が多い結果となりました。また、本当に危険ではないのかという意見も一部ありましたが、宅配ロボットが都心を走行する未来について、「賛成する」「やや賛成する」と約8割の方がおっしゃられており、ロボットと共生する未来に期待を感じられている結果となりました。

 

 

イノラボ、今回の実験から得られた知見を踏まえ、今後も都市部や過疎地におけるラストワンマイルの課題解決や自律走行技術の更なる発展、ロボットを活用した様々なサービスの実現に向けて、IoAやHRI(ヒューマンロボットインタラクション)の視点から活動していきます。

 

 


 

参考情報

・CarriRo Deliveryの詳細はこちら