フランス・VIVA Technology 2019に⾒るオープンイノベーションと社会課題の潮流

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    2019年5月16~18日にフランス・パリにて開催された「VIVA Technology 2019」というテックイベントに参加してきました。本イベントは欧州最大級のオープンイノベーションの祭典として知られており、2019年で第4回を迎えました。
    2018年(第3回)に続いてマクロン仏大統領自ら登壇してスピーチするなど、国の後押しを受けた一大イベントになっています。

    会場(Paris Expo Porte de Versailles)の様子。会期中124,000人が訪れ、13,000社のスタートアップが参加しました(公式サイト情報)。</span style>

     

    ラボ形式: オープンイノベーションを生み出す仕掛け

    このイベントが「オープンイノベーションの祭典」と呼ばれる所以は、「ラボ方式」と呼ばれる特殊な展示方式にあると言えます。
    「ラボ方式」とは、大企業やベンチャーキャピタル(VC)がそれぞれラボ(Lab)と呼ばれる広いブースを構え、自ブース内に選出した複数のスタートアップを展示するもので、多いものですと1つのラボに50以上ものスタートアップが並びます。

    ラボへの出展を希望するスタートアップは、イベントの半年ほど前から始まる「[VivaTech Challenges]」と呼ばれるコンペプログラムに参加し、展示スペース獲得を目指すことになります。

    「VivaTech Challenges」プログラムでは、基本的に企業が解決したい課題をチャレンジ(Challenge)として提示しています。
    そのため、チャレンジに対して良いソリューションを提示できたスタートアップには、イベント参加権のみならずその企業との将来的な共同開発や投資の機会が与えられる場合もあり、スタートアップ側のモチベーションになっていると考えられます。
    このように、「ラボ形式」は、大企業の課題をスタートアップが連携して解決を目指す、まさにオープンイノベーションを生み出すための仕掛けであると言えます。

    イベントの参加者側の視点から見ても、テクノロジ要素が前面に出された一般的なテックカンファレンスと比較して「そのスタートアップがどんな課題を解決できるか?」という疑問に対するイメージが湧きやすいため、同じような課題を抱える参加者-スタートアップ間や同じ課題解決に向けてソリューションを開発するスタートアップ-スタートアップ間でのビジネスマッチングが起こる効果も期待できます。

    こうした、課題にフォーカスしてテクノロジ色を抑えた作りは、主催のPublicis Groupe(広告代理店)とLes Échos(経済新聞社)による意図的なデザインであると考えられ、LVMH(多くのラグジュアリーブランドを束ねるコングロマリット企業)やL’Oréal(化粧品会社)などの非テック企業が大きなラボを構えるテックカンファレンス、という独特の魅力につながっていると感じました。


    フランスのフードサービス企業Sodexoのチャレンジ(左)と会場ラボの様子(右):
    “どうやって職場環境のユーザ体験を測定・モニタリングできるか?”というチャレンジに対し、顔映像解析による感情分析の英スタートアップであるRealEyes社が出展するなど、課題とソリューションの対比が分かりやすくなっています。
    (左図は[Vivatech Challengesサイト]より引用)</span style>

     

    Tech For GoodとSDGs: 社会課題の潮流

    VIVA Technologyがテクノロジではなく企業課題にフォーカスしたイベントである、という点はこれまで述べてきた通りですが、実は、単体企業がホストするラボのほかにも、社会課題に根差したイベント側主催の大規模なラボも存在しており、フランスが力を入れる社会課題の潮流をつかむことができます。

    VIVA TechnologyはGreenTechやEdTech等、環境、経済、社会、人間性によい影響を与えるためのテクノロジを総称した「Tech for Good」を支柱の1つとして定義しています。
    例えば、「[GreenTech Challenge]」では、「きれいな空気と水」「安全でヘルシーな食料と水」「継続可能で手に入れやすいエネルギー」「生物多様性の保全」「健康で安心なこと(Well-Being)」のカテゴリでスタートアップの参加を募っていました。

    「Tech for Good」は、世界的に取り組みが広がりつつあるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)をテクノロジでどう達成していくか?という問題としても捉えることもできると思います。
    会場内の大きなスペースを割いてTech for Good関連のラボを展開したことからも、VIVA Technology、ひいてはその催行を後押しするフランス政府がこのテクノロジに大きな関心を持ち、力を入れて取り組んでいく、という強い意志の表れのような印象を受けました。


    GreenTechラボの様子(左写真)と、高度な圧縮・整理技術により膨大な収納能力を実現したプラスチックボトル回収BOXであるb:bot(右写真)</span style>

     

    最後に

    以上、「オープンイノベーションの祭典」ことVIVA Technology 2019の参加レポートでした。
    現地スタートアップ企業とのネットワーキングにとどまらず、オープンイノベーションを有機的に作用させるための企業とスタートアップの関連の作り方やTech for Goodに向けた国を挙げた取り組みなど、多くの学びがありました。

    イノラボも「オープンイノベーション」を標榜する組織であり、様々な社会課題をテクノロジで解決するためのアイデアをスタートアップをはじめとしたパートナー連携でプロトタイピングし、実証実験を通してその価値を社会に問いかける活動をしており、それらの中には、SDGsの達成を目指す「Tech for Good」に関わる活動も含まれます(*)。

    今後も、「ありたき未来」を実現するためのアイデア、テクノロジ、ユーザ体験の具現化と社会実装を追求していきます。

     

    text:平原誠也

     

    (END)


    (*) [「生産者の哲学」をブロックチェーンで可視化。エシカル消費先進地フランスで実証実験]
    (*) [ISIDとシビラ、ブロックチェーン技術を用いて教育分野におけるコミュニティの可視化と長期的な関係維持を検証]