わたしたちの話をしよう――女性中心のテクノロジー;排卵周期をセンシングで管理する

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    Ava(エイバ)のテクノロジーが、女性の健康知識や健康管理の考え方を変えるかもしれない。Avaブレスレットは、身につけるだけで女性特有の身体の変化を3つのセンサーがとらえ、妊娠可能期間をより正確に把握することができるのだ。

     

    どんなにすばらしいテクノロジーのツールがあったとしても、その先にコミュニケーションがなければ意味がない。もしくは、コミュニケーションの先に、テクノロジーツールがないと意味がない。

    排卵周期を管理するアプリは日本でも話題になったが、Ava(エイバ)のアプリはそれらとは一線を画す特長を備えている。Avaのブレスレットや排卵周期管理アプリは、高度なセンシングのテクノロジーをもっていて、Avaブレスレットの利用者が増えれば、女性同士の意見交換が活発になる可能性がある。そしてそこから、どんなテクノロジーをもって彼女たちの生活に付加価値を与えるかのヒントをくれるのだ。

    女性の健康に関する知識が足りていない

    健康で文化的な生活を子どものころから送るように叩き込まれてきたし、大人になってからもそういう生活を送ってきた。おかげさまで、健康診断はだいたいオールA、ときには持病で通院することはあるものの、健康体そのものだ。

    でも、最近になって気付いたことは、このフィジカル面での健康も、メンタル面での健康も、基本的には男性が9割を占める環境での話だということだ。その環境にたまたま私が適合したから「健康」という称号が与えられたのであって、私のような女性ばかりではないかもしれない。たまたま仕事でいっしょになった、とあるEAP(Employee Assistance Program: 従業員支援プログラム)の会社の臨床心理士に教えられた話では、現行の健康診断の検査項目は、組織における男性の健康リスクを未然に防ぐという観点を基軸にしているもので、女性の健康リスクについては考慮がされていないという。例えば、がん統計を見ると、男性では、40歳以上で消化器系のがん(胃、大腸、肝臓)の死亡が多くを占めるが、女性では、40歳代では乳がん、子宮がん、卵巣がんの死亡が多くを占める。一般的に、30歳を過ぎると、バリウムや胃カメラを使った胃の検査が必須項目として課せられているが、女性特有の疾患についての検査はオプションとしてしか選択肢を与えられていないケースがまだまだ多い。このように、女性が社会で働くようになって、その健康面での適切な情報やその知識はまだまだ足りていないのだ。

     

    30歳になったくらいのころ、久しぶりに東京に出てきた高校時代の友人と丸の内でランチを食べた。彼女は、表情はいつものように元気だったけれど、いつもよりどこか疲れた印象があった。短い近況報告をしたあと、彼女と別れたが、そのあと「実は流産を経験して、2週間前に手術をしたばかりだった」というメッセージをもらった。直接は言えなかったと。当時、彼女は家業の仕事がたいへんで毎日毎日仕事に追われていた。だから妊娠していることがわかったとき、正直どうしたらいいんだろうと思ったという。子どもを産んでも良いのかどうか、悩んでしまった。その迷いが続いている中、流産したことがわかって、きっと自分が妊娠に対してとてもストレスフルな状態になったことが原因だったんだと、私に話してくれた。彼女が激しく後悔し自分のことを強く責めていたのを、とてもよく覚えている。

    Avaブレスレットで正しい妊活と健康管理を行おう

    チューリッヒに本社を構える。Ava AG(以下Ava社)は、2014年に妊娠の可能性が最も高い時期を予測するための排卵周期が追跡できるブレスレットを開発した。これは、妊娠予測のためのFitbit(フィットビット:ウェアラブル活動量計)のようなもので、女性の睡眠時のデータを収集し、ほぼ90%の精度で妊娠確率が最も高い日を予測することができるという。

    Avaブレスレットの開発者でCEOであるLea von Bidder(リア・フォン・ビダー)氏は、女性が集まるオンラインコミュニティで、彼女たちの多くが流産についての誤った知識や偏見を持っていることに気付いた。そこに集まった女性たちの多くも友人と同じく、流産を経験したことで、自分自身を非難していた。一般的に、流産のおもな原因は、染色体異常によるもので、それは受精した段階で決定される。ところが、Ava社が実施した調査によると、流産をしたことのある女性の約70%が、ストレスが原因だと考えており、さらにそのうちの27%がストレスを引き起こす何らかの行動をしたと考えていることが分かったのだ。

    Ava社は、このような女性たちによる、「自身の疾患に対する偏見を解消すること」をミッションとしている。Avaブレスレットのようなテクノロジーを活用して、女性の健康課題を解決する分野をFemTech(“Female”と “Technology”を組み合わせた造語)という。

     

    Avaブレスレットには、体温計、加速度計、光学センサーの3つのセンサーが内蔵されていて、体温、呼吸、心拍数、脈拍数、睡眠の質の変化などの情報を収集できる。このデータは、スマートフォンアプリに同期されるので、身体情報を簡単にチェックできる。排卵周期を予測するためには、従来では、毎朝特別な体温計で体温を記録していくことが一般的である。従来の方法と比べるとはるかに簡単だし、正確だ。スイスのチューリッヒ大学病院で行われた41人の女性を対象とした1年間の調査で、Avaのテクノロジーはその月の最も妊娠確率の高い5日を予測するのに89%正確性を持っていることが明らかになったという。

     

    月経周期の調節および排卵および着床のため、生殖ホルモンはさまざまな身体の生理的データに影響を与える。 Avaブレスレットは、生殖ホルモンによって与えられる生理学的数値の変化を使って、現在の排卵周期の状態を計算する。

    手首で測定された皮膚温度で、黄体期と卵胞期の終わりを予測できる。同様に脈拍数の増加からは、妊娠可能期間中かどうかの予測が可能だ。さらに、心拍数からはストレス度合を計ることができる。光学センサーでは、血流量を測定することが可能で、月経期の少ない血流量を観察することが可能だ。

     

    先述したが、女性の健康に関するデータはまだまだ少ない。特に、排卵周期に関する研究は複雑で明らかになっていないことも多い。女性の健康に関する研究は少ない。その一方で、女性の自分の健康に対する意識は年々高まっているし、特に充実した仕事を持っている女性にとっては、自身の出産と自身の身体についてより深く知りたい欲求が強いことが予想される。このような価値観のしっかりしている女性向けのテクノロジー活用には、注目していきたい。

     

    text:青木史絵