INNOLAB MEMBERS

Producer

Junichi Suzuki

鈴木 淳一

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街が変わると、ライフスタイルが変わる。そして社会が変わっていく。


Q1

現在イノラボでどんなことを研究していますか?

A1

主に担当しているのは「Post City Science(未来の街づくり・電脳都市)」という研究領域です。また、派生領域として「Inbound Scape(訪日外国人向け滞在価値向上)」「Future Currency(暗号通貨など未来のお金)」「Robotinity & Fashion(工芸繊維と服飾科学)」「Human Data Sensing(環境変化と生理心理)」などの分野を追いかけています。たとえば、街が温熱環境を個々の来街者に合わせて自動的に調整できたら、機能性よりもファッション性を優先して着たいものを着る時代が来ると思います。そのように“街が変わると、私たちのライフスタイルやファッションはどのように変化していくのか”ということを考えています。


Q2

過去に手がけた事例を紹介してください。

A2

Post City Scienceに関しては、2013年4月に竣工した大阪駅前の大規模再開発プロジェクト「グランフロント大阪(GFO)」の成功が大きいです。ICT周りのコンセプトデザインを担当しましたが、街全体にソーシャルシティプラットフォームという共通ICT基盤を採用し、コミュニティー運営を担うソシオと呼ばれるチームと連携することで街のコンテンツに人づてで接触する仕掛けとしました。内外で賞をいただき、その後の海外展開へと続きます。GFOでは、それまでの都市再開発では後手に回ることの多かったCRM施策、そのためのICT活用施策を“街のファンをつくる”という大目標を達成するために竣工前から最優先して取り組み、デジタル機材を街のインフラとして埋設するなど画期的なアプローチとなりました。人間関係を重視した街のファン形成施策は、実空間内で消費動線が完結しないショールーミングを防止するだけでなく、 エリアの差別化にもつながります。高精度な屋内測位環境なども当時としては新しく、開発事業者各社ほか関係者皆さまの英断に感謝です。


Q3

いまもっとも関心のある最先端技術は?

A3

“シノモン(Synomone)”の計測演算技術です。生物の個体間に作用する生化学的信号物質、いわゆるインフォケミカル(Infochemical)のうち、種を超えて異種個体間で作用するものをアレロケミカル(allelochemical)と呼びますが、産生する側も受容する側もともに利益を得るのがシノモンです。具体的な例としては「花の香り」ですね。花は花粉を運んでもらうことができ、誘引された昆虫は蜜や花粉を得ることができる。双方にメリットがあります。シノモンのように、植物と人や、原生生物と人など、異種個体間の情報流を可視化する技術が今後どんどんでてきます。そこに私たちのICTを活用する余地があるのではないかと思っています。ちなみに、同種個体間に作用するものがフェロモンですね。そちらの方が知られていますが、フェロモンは人類の壁を越えられません。シノモンは目に見えないということもあり、なかなかリサーチ成果を実サービスにつなげるのは難しい状況ではありますが、異種個体間でインタラクティブにコミュニケーションを取るための未来的なコンセプトとして、メディアアートなどの領域から国際的に啓蒙活動を展開していきたいと思います。


Q4

研究分野で成し遂げたいこと・思いを語ってください。

A4

人間が街や社会、またSNSなどで日々下している意思決定の仕組みや、文化や伝統が人々を惹きつける秘密などを読み解くことで、人が快適に過ごせる社会をつくるというのがテーマでして。特に人間の本能や直感、生理心理といった科学的な解明が待たれる新しい研究領域に対して、最先端の研究者たちと実験段階からご一緒させていただき、事業開発の視点で彼らの技術開発を支援出来たらと思っています。おそらくそういう分野こそ事業性は大きいだろうと。機能やスペックという基準でモノやサービスを選ぶことは、2015年の情報サービス業界において当然とされていますが、いずれ一般的なサービス業と情報サービス業の境界線があいまいになり、そう遠くない将来、“IT”という言葉すらなくなるときがやってくるかもしれません。そんな時代が訪れたとき、その機能性以上に“好きかどうか”が大きな比重を占めるようになっていくでしょう。人が人に惹かれるプロセスや、モノに人格を認めたり愛情を感じたりする生理心理の解明は今後ますます重要になると思います。

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Q5

あなたにとってイノラボとはどんな場所?

A5

イノラボでは“未来志向の研究”を前提にしているので、特定のテクノロジーやソリューションにフォーカスすることはあえてしないのですが、その意味で一番ありがたいのは中立性が保たれていること。電通グループですので、メーカーやエリアなどによる壁や穴がなく、どこへでも中立の立場で行けるメリットがあります。とはいえ民間企業ということで、必ずしも公益性を前提とした事業開発を求められることもない。そのようなオープンイノベーションの推進に最低限必要な中立性と自由度の高さが確保できていることはありがたいですね。加えて、もともと電通国際情報サービスという会社は国際的な事業展開を生業にしてきましたので、海外で生まれたばかりのベンチャー企業のビジネススキームですとか、制度設計が進みつつある技術領域の最前線にリアルタイムに触れることができる、そのように非常に恵まれた環境にあると思っています。


Q6

イノラボはこれからどう進化していくべきでしょうか?

A6

世界中の先端技術を集め、未来の都市やライフスタイルをテーマにコンセプトワークや研究開発を進める専門家集団……イノラボはこのように表現されることが多いのですが、おそらく今後も事業化を見据えたアプローチが加速することはあっても、その在り方は変わらないと思います。ただ、注意したいのは、未来の都市やライフスタイルを生み出していくのも、謳歌するのも人間だということ。良くも悪くも人の進化によって社会は変わり、もちろんイノラボも人によって進化していけるのだと思います。そういう意味で、ロボットが好きなあまり、身にまとうロボットを開発し、ロボットを着てしまった外部研究員きゅんくんには未来を先取りする高いセンスを感じますし、そのような異彩を放つ人材を、これからも発掘していく必要があるのだと思います。われわれプロデューサーにはアートやファッションなど人間の感性領域について科学的に論理構成していく作業とともに、そのようなロボティニティー(Robotinity)やシノモン(Synomone)といった、未踏分野・新奇なるものへの理解も求められるのだろうと思います。


Q7

いまもっとも興味のある人物・関心ごと、趣味はなんですか?

A7

パリで自然志向のライフスタイルを送り、若者層のインフルエンサーとして存在感を増してきている「BOBO(ボボ:ブルジョワ・ボヘミアンの略)」と呼ばれる人たちに興味があります。裕福な家庭で育ち、しっかりとした教養を身につけている彼らは、ファッション関係や建築関係などクリエイティブな仕事に就き活躍しています。暮らしぶりはとてもナチュラルで、高級ブランドに囲まれた生活よりも、自分の時間を大切にしたリラックス重視の暮らしを送り、都会にいながらオーガニックや身体に良いものを、積極的に取り入れています。先ほど“人の進化によって社会は変わる”と申し上げましたが、まさに今パリの若年層のライフスタイルはBOBOによって変化しつつあります。彼らの興味関心事が世界に発信されるようになると、私たちの生活にどのように影響するのか。SNSの時代ですから、どんどん伝搬していきますよね。今後その変化を追いかけてみようと思っていて、インフルエンサーを介した訪日外国人の滞在価値向上や、海外における日本のファンコミュニティー形成に向けた新たな取り組みを始める予定です。趣味は車庫入れです。


Q8

最後に、自分のアピールポイントは?

A8

フットワークが軽いこと、オープンスタンスなことですね。特に新しい技術とか、新しいビジネススキームに対しては、いとわずどこにでも出掛けて行って、まずお話をしてみることを心掛けています。是非、ご縁をと思います。


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Producer

Junichi Suzuki

鈴木 淳一

事業部門にて欧米ハイブランドを中心にロイヤルティマネジメントやOut-In型M&A事案を担当後、2011年イノラボへ。グランフロント大阪のICTコンセプトデザインを手掛け、2013年にAegis Award(LBS)最優秀賞。専門はPost City Science(未来都市), Inbound Scape(訪日価値向上), Future Currency(暗号通貨), Robotinity & Fashion(工芸繊維), Human Data Sensing(生体科学)の研究。クオリティ・マガジン"MODE.TOKYO"プロデューサー、放送大学客員講師。