COLLABORATION PARTNERS

Senior Research Fellow

Jun Rekimoto

暦本 純一

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研究の社会実装を見据えたとき、イノラボは非常に頼りになるパートナーだと思っています。


Q1

現在イノラボでどんなことを研究していますか?

A1

今やっているのはAugmented Sportsです。拡張するスポーツと呼んでいますが、テクノロジーを使って未来のスポーツを構築しようという研究です。イノラボには、社会課題のソリューションとなるような新たなサービスを生み出すといった大きな目標があります。そこでスポーツを切り口に、IT技術を駆使して、体を動かすことが楽しくなったり、誰でもできるようにしたり、あるいは練習を効果的に行えたりと、みんなが楽しくスポーツをできるようにしようというわけです。


Q2

過去に手がけた事例を紹介してください。

A2

研究中のAugmented Sportsの具体例を挙げると、ボールの中にドローンを入れて自由に飛べるHoverBallを作りました。これはボールに慣れていない子どものために速度をコントロールできたり、落ちずに浮いていたりと、今までのボールを超えて物理法則に縛られない動きをします。もう1つがAquaCAVEです。これは水泳の未来形。プールの壁に3Dプロジェクションを使って投影し、泳いでいる人の周りを映像で取り囲んで仮想空間へと変えます。珊瑚の海で泳ぐ体験ができたり、宇宙の映像を見ながら遊泳したり、水泳が楽しくなります。映すコンテンツを変えれば、エンタメだけでなくトレーニングでの活用もできます。


Q3

いまもっとも関心のある最先端技術は?

A3

ユーザーインターフェースの研究の進化形として、広い意味で人間の能力とかが強化されるサイボーグ的なところに関心があります。たとえばAR(Augmented Reality=拡張現実感)は、ヘッドマウントディスプレイを被ると情報が出てきて知覚能力を強化できました。それをさらに発展させた概念を、私たちはAH(Augmented Human)と呼んでいまして、情報に限らず人間の身体技能をも拡張する技術として非常に興味を持っています。AH によってどんなことができるのか、具体例としては「JackIn」と名付けた研究をしています。これは、ある人が見ているものをネットワーク上に送り、それを別の人の視覚に置き換えることができます。たとえば専門家が現場に行けないとき、誰かの体の中に入り込むような形で現場に行き、専門家の目線で見ることができるようになります。人間の行き来が仮想化できるのです。


Q4

研究分野で成し遂げたいこと・思いを語ってください。

A4

大学の研究室は技術開発ですからかなり先端的に尖らせることが大事ですが、イノラボはどちらかというと“広げる”といったところです。イノラボと共同研究を行うことは重要で、社会実装とか、社会展開とか、あるいはもしAquaCAVEのような装置をどこかに入れていただこうとしたときに非常に頼りになるパートナーだと思っています。実際に子どもが使ったらどうなるかとか、シニアの方が使ったらどうなるとか、そういったところ一緒にやっていきたいと思っています。

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Q5

あなたにとってイノラボとはどんな場所?

A5

実際にモノを作ってそれを社会に根付かせるとか、イノラボはモノ作りの部分が強いと思います。ですから研究室と一緒にプロジェクトを進めればもっと大きなことができる気がしています。情報技術をどうやって具現化して行くかというところにも非常に魅力を感じています。


Q6

イノラボはこれからどう進化していくべきでしょうか?

A6

現在、IoT(Internet of Things)がキーワードとなっています。さまざまなデバイスがインターネットにつながる世界が来つつあると思います。技術としては、たとえばセンサーをつなぐことで自動車が自動運転できるようになると思うのです。しかし、そうした世界になったら社会はどう変わっているのか、暮らしぶりはどうだろうかなど、一つひとつの技術を並べただけでは分かりません。10年後、20年後の社会がどうなっているのかを思い描くことがすごく重要だと思います。今までは要素技術がバラバラに進化してきましたが、これからの10年、20年でそれらが統合されて社会に入っていくようになります。それによって社会の構造が変わっていきます。イノラボが未来の社会で必要とされるものを先取りして行くには、技術論だけでなく、社会がどう変化するかといった巨視的な視点を持つことが大事だと思います。


Q7

いまもっとも興味のある人物・関心ごと、趣味はなんですか?

A7

趣味といえば食べ歩きが好きなんですが、調理方法の進化にも興味があります。もしかしたら料理の未来は変わるかもしれません。ということで、来年あたりイノラボと料理の共同研究をしているかもしれませんよ!?人工知能による新しいレシピづくりをはじめ、情報科学の分野でも研究が盛り上がっています。研究室でもサーモカメラでフライパンの温度管理をして完璧な半熟玉子やオムレツを作ったり、真空パックした肉をコンピューターで温度管理したお湯で徐々に温めて完璧なレアのステーキを作ったりして楽しんでいます。


Q8

最後に、自分のアピールポイントは?

A8

研究者としてはアイデアありきで、新しいことを思い付いたり、他の人が考えなかったような視点でものごとを考えるとかがまずアピールポイントかなと思います。そして、それをアイデアにとどまらず、みんなが分かるような形で具現化していくところでしょうか。


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Senior Research Fellow

Jun Rekimoto

暦本 純一

1986年 東京工業大学理学部情報科学科修士過程修了。 日本電気、アルバータ大学を経て、1994年より株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所に勤務。 2007年より東京大学大学院情報学環教授 (兼 ソニーコンピュータサイエンス研究所副所長)。多摩美術大学客員教授。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 訪問教授。 グッドデザイン賞審査委員。電通ISIDスポーツ&ライフテクノロジーラボシニアリサーチフェロー。PlaceEngine, AR事業を展開するクウジット株式会社の共同創設者でもある。 理学博士。 ヒューマンコンピュータインタラクション全般、特に実世界指向インタフェース、拡張現実感、テクノロジーによる人間の拡張、Augmented Sportsに興味を持つ。世界初のモバイルARシステムNaviCamや世界初のマーカー型ARシステムCyberCode、マルチタッチシステムSmartSkinの発明者。研究成果はSony, Sony Computer Entertainmentの製品群、Koozytでの一連の位置情報サービスやARサービスなどに広く利用されている。ACM SIGCHI Academy, ACM UIST Lasting Impact Award, グッドデザイン賞ベスト100ほか受賞多数。